「中国メーカーから商品を仕入れるとき、SDSは必要?」
「取引先からSDSを提出してほしいと言われたけれど、そもそも何の書類?」
「中国メーカーからMSDSをもらったけれど、SDSとは違う?」
中国OEMの商品開発では、価格やMOQ、納期、商品仕様だけでなく、商品や使用する原料によってSDS(安全データシート)を確認することがあります。
結論からいうと、中国OEMで重要なのは「SDSを入手すること」ではありません。
重要なのは、
なぜSDSを確認する必要があるのかを理解する
↓
発注する商品・原料に対応したSDSを入手する
↓
記載内容を確認する
↓
必要に応じて法規制や輸送条件などの確認につなげる
という流れです。
中国メーカーからSDSのPDFが送られてきただけで、「確認完了」としてしまうのはおすすめできません。
なぜなら、別の商品や原料のSDSだったり、古い資料だったりする可能性があるためです。
また、SDSがあるからといって、その商品の安全性や日本での販売可否が保証されるわけでもありません。
実際にSDS不足で国内製造へ切替・工場変更・作り直しを経験しました。
この記事では、中国OEMの商品開発・商談という視点から、SDSとは何か、中国メーカーへSDSを求める理由、入手したら確認したいポイント、メーカーへの依頼方法まで解説します。
この記事で分かること
- SDS(安全データシート)とは何か、MSDSとの違い
- 中国OEMでメーカーにSDSを求める理由
- SDSを確認したい商品・原料と判断の考え方
- 中国メーカーからSDSを受け取ったときに確認する6つのポイント
- 実際の中国OEM事例から分かるSDSの注意点と発注前の対策
本記事は、著者が実際に中国工場とのOEM交渉を行い、SDSの提出不足を理由にパッケージを国内製造へ切り替えたケースや、必要なSDSを提出できない工場への発注を見送ったケース、材料の不一致によって作り直しになったケースなどを経験したうえで執筆しています。
単に「SDSとは何か」を説明するだけでなく、実際の中国OEMでどのような場面でSDSを確認し、何を見て、どのように発注判断につなげるのかを、実務経験をもとに紹介します。
SDS(安全データシート)とは?中国OEMで知っておきたい基礎知識
SDSとは「Safety Data Sheet」の略で、日本語では安全データシートと呼ばれます。
簡単にいうと、化学品について、
「何が含まれていて、どのような危険性・有害性があり、どう取り扱えばよいのか」
などを確認するための文書です。
SDSには、成分、危険有害性、取扱いや保管方法、事故が起きた場合の対応、輸送上の注意などが記載されています。
日本では労働安全衛生法や化管法、毒物及び劇物取締法などにSDSに関する制度がありますが、すべての商品について一律にSDSの提供が義務付けられているわけではありません。
対象となる物質や製品、取引形態などによって扱いが異なります。
そのため中国OEMでは、
「OEM商品だからSDSを必ず取得する」
と考えるのではなく、
「今回扱う商品や原料についてSDSを確認する必要があるのか」
を商品ごとに判断することが大切です。
SDSに記載される16項目とは?主な確認内容を一覧で解説
SDSはGHSに対応したJISでは16項目で構成されています。
代表的な内容をまとめると、次のようになります。
| No. | SDSの項目 | 主に確認できる内容 |
|---|---|---|
| 1 | 化学品及び会社情報 | 化学品の名称、推奨用途、供給者の会社情報・連絡先など |
| 2 | 危険有害性の要約 | GHS分類、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書きなど |
| 3 | 組成及び成分情報 | 化学物質・混合物の区別、成分名、含有量、CAS番号など |
| 4 | 応急措置 | 吸入、皮膚付着、眼への接触、飲み込んだ場合などの応急措置 |
| 5 | 火災時の措置 | 適切な消火剤、使用してはいけない消火剤、消火時の注意など |
| 6 | 漏出時の措置 | 漏出した場合の人体・環境への注意、回収・除去方法など |
| 7 | 取扱い及び保管上の注意 | 安全な取扱方法、保管条件、避けるべき条件など |
| 8 | ばく露防止及び保護措置 | 管理濃度、許容濃度、換気、保護具など |
| 9 | 物理的及び化学的性質 | 状態、色、臭い、引火点、沸点、pHなどの物理・化学的特性 |
| 10 | 安定性及び反応性 | 化学的安定性、反応性、避けるべき条件・物質など |
| 11 | 有害性情報 | 急性毒性、皮膚・眼への影響、発がん性などの健康影響に関する情報 |
| 12 | 環境影響情報 | 生態毒性、残留性・分解性、生体蓄積性など環境への影響 |
| 13 | 廃棄上の注意 | 内容物や容器を廃棄するときの注意事項など |
| 14 | 輸送上の注意 | UN番号、国連輸送名、輸送上の危険有害性クラスなど |
| 15 | 適用法令 | 対象となる国内法令など |
| 16 | その他の情報 | 参考文献、改訂情報、その他の補足情報など |
SDSやGHSをさらに詳しく学びたい方には、『Q&Aで解決 化学品のGHS対応SDSをつくる本 第2版』も参考になります。SDSの基本からGHS分類まで体系的に学べる一冊です。
中国OEM担当者が、SDSに記載されたすべての項目を化学の専門家と同じレベルで判断する必要はありません。
まず確認したいのは、
「自分が発注する商品・原料についてのSDSなのか」
そして、
「商品化・輸入を進めるうえで確認すべき情報が記載されていないか」
という点です。
SDSは単なる提出書類ではなく、次の確認につなげるための資料として考えると分かりやすいでしょう。
SDSとMSDSの違いは?中国メーカーとの取引での注意点
中国メーカーと商談していると、「SDS」ではなく「MSDS」という言葉が出てくることがあります。
MSDSは「Material Safety Data Sheet」の略です。
日本でも以前はMSDSという名称が使われていましたが、現在はGHSとの整合などから「SDS」という名称が使われています。
一方、中国メーカーとの実務では、現在でもMSDSという名称で資料を管理している場合があります。
そのため、
「SDSはありますか?」
と聞いて、
「SDSはありません」
と言われても、それだけで判断する必要はありません。
必要であれば、
「MSDSはありますか?」
と確認してみましょう。
重要なのはSDSかMSDSかという名称そのものではなく、実際に資料を受け取り、何の商品・原料について作られた資料なのかを確認することです。
中国OEMでメーカーにSDSを求める5つの理由
中国OEMでSDSをメーカーへ要求する主な理由は、商品化を進めるために必要な情報を確認するためです。
SDSそのものを集めることが目的ではありません。
SDSから得た情報を、成分、危険有害性、保管、輸送、日本の法規制などの確認につなげることが重要です。
①商品の成分・原材料を確認するため
まず確認したいのが、商品に使用されている物質に関する情報です。
中国メーカーから商品仕様書や見積書を受け取っても、使用している化学物質について十分な情報が記載されていない場合があります。
そこで商品や原料によっては、SDSを依頼して組成・成分情報などを確認します。
たとえば、
「どのような物質が使われているのか」
「日本側で追加確認した方がよい物質が含まれていないか」
を調べる際の手掛かりになります。
ただし、ここで注意したいのは、SDSは商品の配合をすべて公開するための資料ではないということです。
SDSを入手したからといって、商品の全成分や正確な配合割合まで必ず分かるとは限りません。
そのため、
SDSを入手する→必要な情報を確認する→不足している情報があればメーカーへ追加確認する
という流れで考えるのがおすすめです。
② 商品・原料の危険性や有害性を確認するため
SDSを確認するもう一つの理由が、商品や原料の危険性・有害性を把握するためです。
OEM商品の外観やサンプルを見ただけでは、使用されている物質の危険性まで判断できない場合があります。
SDSには、対象となる化学品について、引火性や健康への有害性などの情報が記載されています。
そのため、メーカーからSDSをもらったら、
「SDSがあるから大丈夫」
ではなく、
「どのような危険有害性が記載されているのか」
を確認することが重要です。
不明な内容があれば自己判断だけで進めず、必要に応じて専門家や関係機関などへ確認しましょう。
③ SDSで取扱い・保管条件を確認するため
商品は中国工場で完成すれば終わりではありません。
中国から日本へ輸入した後には、自社倉庫や物流倉庫などで保管することになります。
商品や原料によっては、保管方法や取扱方法に注意が必要です。
SDSには、
「どのように取り扱うのか」
「どのような条件で保管するのか」
「避けるべき条件はないか」
などの情報が記載されています。
そのため、商品化してから慌てて確認するのではなく、量産を決める前に保管・取扱条件まで確認しておくことが重要です。
④ 中国から日本への輸送条件を確認するため
中国OEMでは、商品を製造できることと、日本へ問題なく輸送できることは別の話です。
どれだけ良い商品を作れても、中国から日本へ輸送できなければ商品化を進められません。
SDSには「輸送上の注意」があり、商品によっては輸送に関係する情報が記載されています。
ここで特に注意したいのが、
SDSがある=問題なく輸送できる
という意味ではないことです。
商品や輸送方法によっては、フォワーダーや輸送会社から追加資料を求められることがあります。
航空輸送と海上輸送でも確認事項が異なる可能性があります。
したがって、輸送について判断できない場合は、SDSだけで自己判断せず、SDSをフォワーダーなどへ提示して輸送条件を確認することも検討しましょう。
⑤ 日本の法規制を確認するための手掛かりにする
中国で製造・販売されている商品だからといって、日本でもそのまま販売できるとは限りません。
日本では、商品の種類、用途、使用される物質などによって、確認すべき法令が変わります。
SDSに記載されている成分情報やCAS番号、適用法令などは、日本側で規制を調べる際の手掛かりになります。
つまり、SDSは日本での販売可否そのものを証明する資料ではなく、必要な法規制を調べるための情報源の一つです。
SDSを受け取ったら、それだけで確認を終了するのではなく、必要に応じて国内法規制の確認まで進めることが大切です。
中国OEMでSDSを確認したい商品・原料とは?
結論として、すべてのOEM商品についてSDSを取得する必要があるわけではありません。
一方で、化学物質や液体、薬剤などを使用する商品では、商品開発の段階でSDSを確認する場面があります。
たとえば、
- 洗浄剤
- 接着剤
- 塗料
- インク
- コーティング剤
- 潤滑剤
- その他の化学品・原料
などです。
また、完成品そのものではなく、商品に使用する原料についてSDSを確認するケースもあります。
そのため、
「洗浄剤だから必ず必要」
「雑貨だから必要ない」
と商品カテゴリーだけで単純に決めるのではなく、使用している原料や用途なども含めて判断することが重要です。
さらに、リチウムイオン電池を使用する商品などでは、SDSだけで確認が完了するとは限りません。
商品や輸送方法によっては、UN38.3など別の試験・資料の確認が必要になる場合があります。
SDSは必要書類のすべてではなく、商品化に必要な確認資料の一つとして考えておきましょう。
中国メーカーからSDSを受け取ったら確認する6つのポイント

中国メーカーからSDSのPDFが送られてくると、「SDS入手済み」として確認を終えたくなります。
しかし、中国OEMではSDSを入手した後の確認が重要です。
私は少なくとも、次の6点を確認することをおすすめします。
① 発注する商品・原料とSDSが一致しているか確認する
最初に確認するのは、
「本当に自分が発注する商品・原料のSDSなのか?」
という点です。
商品名、型番、原料名、メーカー・供給者などを確認します。
中国メーカーが似た商品を複数扱っている場合、別の商品や別原料の資料が送られてくる可能性も考えられます。
そのため、PDFを保存する前に、まず対象商品との一致を確認しましょう。
② SDSの発行日・改訂日と最新版かどうかを確認する
次に確認したいのが発行日や改訂日です。
中国メーカーが以前使用していた古いSDSを保管していることも考えられます。
そのため、SDSを依頼する段階から、
「最新版を送ってください」
と伝えておくと確認しやすくなります。
資料を受け取った後も、発行日・改訂日を確認しましょう。
③ SDSのメーカー・発行元を確認する
OEMを依頼している中国企業と、SDSに記載されている企業が同じとは限りません。
たとえば、OEM工場が別の原料メーカーから材料を仕入れている場合、原料メーカーが発行したSDSが送られてくることがあります。
その場合は、
「誰が発行したSDSなのか」
「OEMメーカーと発行元はどのような関係なのか」
を確認しておくことが重要です。
④ SDSの成分情報・CAS番号を確認する
SDSの「組成及び成分情報」も確認します。
CAS番号は化学物質を識別するために使用されている番号です。
日本側で法規制などを確認するとき、一般的な商品名だけでは対象物質を正確に特定しにくい場合があります。
そのため、必要に応じてCAS番号などを物質確認の手掛かりとして利用するとよいでしょう。
⑤ 危険有害性・取扱い・保管条件を確認する
危険有害性の要約、取扱い、保管上の注意も確認します。
ただし、危険性を示す記載やGHSの絵表示があるだけで、
「この商品は販売できない」
と判断するのは早計です。
まず、その表示が何を意味するのかを確認します。
判断が難しい内容については、専門家や関係機関などへの確認につなげましょう。
⑥ UN番号などSDSの輸送情報を確認する
最後に輸送に関する情報を確認します。
商品によってはUN番号など、輸送に関係する情報が記載されている場合があります。
自社だけで輸送可否を判断できない場合は、SDSをフォワーダーなどへ送り、
「この商品はこの条件で輸送できますか?」
と確認する方法があります。
SDSをもらうことが目的ではなく、SDSを使って次の確認を進めることがポイントです。
中国メーカーにSDSを依頼する方法|英語の依頼例も紹介
中国メーカーにSDSを依頼するときは、「SDSはありますか?」だけで終わらせないことをおすすめします。
なぜなら、複数の商品を商談している場合、どの商品についてのSDSを要求しているのか分からなくなることがあるからです。
中国メーカーへSDSを依頼するときの確認事項
SDSの有無を確認
↓
商品名・型番を指定
↓
最新版を依頼
↓
PDFで送ってもらう
↓
内容を確認
という流れで進めます。
中国メーカーへSDSを依頼する英語例文
英語で簡単に依頼するのであれば、
「Please send us the latest SDS for this product.」
などと伝えられます。
複数商品を同時に商談している場合は、商品名や型番を明記しておくと、別商品のSDSが送られてくるリスクを減らせます。
また、中国メーカーが「MSDS」という名称を使っていることもあります。
SDSがないと言われた場合は、必要に応じてMSDSの有無についても確認してみましょう。
中国メーカーに「SDSがない」と言われた場合の確認方法
中国メーカーから「SDSはありません」と回答された場合でも、すぐに取引不可と判断する必要はありません。
まずMSDSや原料メーカー保有のSDSを確認する
まず、SDSがない理由を確認します。
たとえば、
- そもそもSDSを確認すべき商品・原料なのか
- MSDSという名称で保管していないか
- 完成品ではなく原料メーカーがSDSを保有していないか
などを確認します。
OEMメーカー自身がSDSを持っていなくても、原料の仕入先から入手できるケースも考えられます。
必要なSDSを確認できない場合は発注を保留する
一方で、商品化・法規制・輸送などの確認を進めるうえで必要な資料なのに、SDSを提出できず、原料について質問しても十分な回答が得られない場合は注意が必要です。
この場合は、
「発注してから確認する」
のではなく、
「必要な確認が終わってから発注する」
という順番を守ることが重要です。
SDSがあっても日本で輸入・販売できるとは限らない
SDSについて最も誤解しないでほしいのが、
「SDSがある=日本で問題なく販売できる」ではない
という点です。
SDSは商品の安全性を保証する証明書ではない
SDSは、化学品の危険有害性や取扱方法などの情報を伝えるための文書です。
そのため、
SDSがある=安全な商品
という意味ではありません。
重要なのはSDSの有無ではなく、そこに何が記載されているのかを確認することです。
SDSだけでは日本の法規制への適合を判断できない
同じように、
SDSがある=日本で輸入・販売できる
という意味でもありません。
商品カテゴリー、用途、使用している物質などによって、日本国内で確認すべき法律や基準は変わります。
また、商品によってはSDS以外の試験報告書や資料が必要になることもあります。
たとえば、対象となる電気用品ではPSEへの対応を確認する必要がありますし、リチウムイオン電池を含む商品では輸送に関連してUN38.3などの確認が必要になる場合があります。
そのため、中国OEMでは、
SDSを入手
↓
SDSの内容を確認
↓
必要な法規制・輸送条件・試験資料を確認
という順番で考えましょう。
中国OEMでSDSを確認してから発注するまでの流れ

ここまでをまとめると、中国OEMでSDSを扱う場合は次のように進めると整理しやすくなります。
中国メーカーから商品提案を受ける
↓
SDSを確認すべき商品・原料か判断する
↓
中国メーカーに最新版のSDSを依頼する
↓
商品名・型番・発行元・発行日などを確認する
↓
成分・危険有害性・取扱い・輸送情報などを確認する
↓
必要に応じて日本の法規制や輸送条件を調べる
↓
不明点を中国メーカーへ再確認する
↓
必要な確認を終えてから発注する
ポイントは、SDSを「メーカーからもらって保管する書類」にしないことです。
SDSに記載された情報を利用して、
「この商品を発注してよいのか」
「追加確認が必要なのか」
を判断するための資料として活用しましょう。
SDS以外にも、中国OEMでは価格、MOQ、仕様、品質基準、納期、検品方法など、発注前に確認しておきたい項目があります。商談時に確認すべき内容をまとめてチェックしたい方は、「中国OEM商談前チェックリスト28項目」も参考にしてください。
中国OEMで実際に起きたSDSトラブル・対応事例4選

私自身、中国OEMの商品開発では、これまで何度も中国メーカーへSDSの提出を依頼してきました。
ただし、取引先とのNDA(秘密保持契約)の関係上、クライアント名、メーカー名、商品名、具体的な成分、取引条件などは公開できません。
ここでは、実際に経験した事例の中から、中国OEMでSDSを確認する重要性を感じた4つのケースを、公開できる範囲で紹介します。
なお、以下は私が実際の取引で経験した事例であり、すべての商品・メーカーで同じ対応が必要になるという意味ではありません。商品や取引先の基準によって、必要な資料や確認内容は異なります。
事例①|パッケージインクのSDSを提出できず国内製造へ変更
あるクライアントの商品では、OEMで使用する素材についてSDSの確認が必要でした。
そのため、中国メーカーに対して、本体だけでなく商品に使用する各素材について資料の提出を依頼しました。
ところが確認を進めていく中で、中国で製造予定だったパッケージに使用するインクについて、必要なSDSを提出できないことが分かりました。
商品本体に問題がなくても、パッケージまで含めるとクライアント側の確認条件を満たせません。
そこで、クライアントへ状況を説明し、パッケージのみ中国製造を取りやめ、日本国内で製造する方法へ変更しました。
国内製造へ切り替えたことで当初の予定よりコストは上がりましたが、必要な確認を行ったうえで商品を販売するところまで進めることができました。
この経験から感じたのは、SDSの確認対象を商品本体だけに限定しないことの重要性です。
商品によっては、インク、接着剤、コーティング剤、パッケージなど、本体以外にも確認対象となる素材があります。
そのため、取引先からSDS提出の条件がある場合は、商品を構成する範囲を事前に整理し、どの素材まで資料が必要なのか確認してから量産を進めるようにしています。
中国OEMでは、商品本体だけでなく、箱の材質や印刷方法、インク、梱包仕様なども事前に確認しておく必要があります。中国工場へパッケージ製作を依頼するときの仕様決定や注意点は、「中国OEMパッケージ設計完全ガイド」で詳しく解説しています。
事例②|SDSだけでは防げず、バッグの補強材からPVCが判明
別のクライアントでは、商品にPVCを使用しないことが条件になっていました。
対象となったのはバッグです。
バッグに使う生地については事前に資料を確認しており、その時点ではPVCが使用されていないことを確認していました。
そのため、生地については問題ないと考えていました。
ところが、完成した商品を第三者機関で検査したところ、バッグ内部に使用されていた補強材からPVCが使用されていることが判明しました。
外側から見える生地ではなく、内部に入っていた補強材が原因でした。
結果として、条件に合わない部分をそのまま使用することはできず、該当部分を作り直す対応になりました。
この経験は、私にとって非常に大きな教訓になりました。
中国OEMでは、メインとなる生地や素材だけを確認していても十分とは限りません。
バッグであれば、
- 表生地
- 裏地
- 補強材
- コーティング
- 接着剤
- 印刷部分
- その他の副資材
など、複数の材料から商品が構成されています。
そのため、特定物質についてクライアント独自の使用制限がある場合は、完成品を構成する材料をできるだけ細かく洗い出し、工場へ確認することが重要だと感じました。
SDSだけですべての使用物質を必ず確認できるとは限りませんが、必要な資料を工場から集め、必要に応じて第三者機関の検査も組み合わせることで、量産後の手戻りを減らせます。
事例③|価格が安くてもSDSを提出できない工場への発注を見送り
中国OEMでは、同じ仕様の商品について複数の工場から見積もりを取ることがあります。
私もある商品で複数工場へ見積もりを依頼し、その中に価格面で有力な候補となる工場がありました。
コストだけを見ると、その工場へ発注するメリットがありました。
しかし、商談を進めて必要書類について確認したところ、要求していたSDSを提出できないという回答がありました。
今回はSDSの確認が必要な案件だったため、価格条件が良くても、その工場への発注は断念しました。
中国OEMでは、どうしても見積価格やMOQに目が向きやすくなります。
しかし、量産後に必要な資料がそろわないことが分かれば、取引先への提出やその後の商品化に影響する可能性があります。
そのため私は、工場を比較するとき、
価格・MOQ・納期だけでなく、必要な資料を提出できる体制があるか
についても確認するようにしています。
私の経験では、海外向け商品の製造実績が多い工場の方が、SDSなどの資料提出に慣れているケースが比較的多くありました。
ただし、海外向けの製造実績があるから必ず必要書類を提出できるというわけではありません。
最終的には、発注予定の商品について実際に必要な資料を提出できるかを個別に確認することが重要です。
中国OEMでは、価格やMOQだけでなく、品質管理体制や必要書類への対応力も含めて工場を選ぶことが重要です。工場選定で確認しておきたい基準については、「中国OEM工場選びで失敗しないための基準」で詳しく解説しています。
事例④|リピート生産で材料が変更されSDSと実物が不一致に
SDSについて特に注意が必要だと感じたのが、リピート生産で経験したケースです。
ある商品を以前と同じ仕様で追加発注し、入荷前に第三者機関へ検査を依頼しました。
その際、素材鑑別を行ったところ、事前に確認していた資料の内容と実際の商品素材に一致しない部分があることが分かりました。
工場へ確認した結果、以前の生産時から一部の材料が変更されていたことが判明しました。
いわゆる、発注者側への十分な共有がないまま材料が変更される「サイレントチェンジ」に近い事例です。
幸い、このケースでは出荷前の検査で判明したため、そのまま市場へ出ることはありませんでした。
しかし、該当部分を作り直すことになり、結果的に当初の予定より納期が遅れることになりました。
この経験から、一度SDSを確認した商品だからといって、リピート生産でも同じ材料が使用されるとは限らないと考えるようになりました。
中国OEMでは、
「前回と同じ商品だから大丈夫」
ではなく、
リピート発注でも材料・仕様が変更されていないか確認する
ことが重要です。
特に、材料変更がクライアントの基準や法規制、品質基準などに影響する商品では、工場への確認だけでなく、必要に応じて第三者機関の検査を組み合わせることも有効です。
材料や仕様の変更リスクを減らすには、使用材料や禁止事項、検品基準などを仕様書に残し、工場と認識を共有しておくことも重要です。中国OEMでの仕様書の作り方や管理項目については、「OEM仕様書の作り方」で詳しく解説しています。
4つの実体験から分かった中国OEMのSDS確認ポイント
これらの経験から、私が中国OEMで特に注意しているのは、「SDSを一度もらえば終わり」と考えないことです。
SDSを確認するときは、
商品本体だけでなく副資材まで確認する
↓
必要な資料を提出できる工場か確認する
↓
SDSと実際に使用する材料が一致しているか確認する
↓
リピート生産でも材料変更がないか確認する
↓
必要に応じて第三者機関の検査を組み合わせる
という視点を持つようにしています。
もちろん、すべての商品で同じレベルの確認が必要になるわけではありません。
クライアント独自の基準、商品の用途、使用する材料、日本国内で確認すべき法規制などによって必要な対応は変わります。
しかし、中国OEMでは価格や納期だけでは見えないリスクがあります。
だからこそ、量産後に問題が発覚して作り直すのではなく、発注前・出荷前の段階で、必要な資料と実際の材料をできる範囲で確認しておくことが重要だと、これまでの経験から感じています。
よくある質問???
中国メーカーが「MSDS」と呼んでいる資料でも問題ありませんか?
現在は「SDS」という名称が一般的です。
MSDSは「Material Safety Data Sheet」の略で、日本でも以前使われていました。
中国メーカーとの取引では現在でも「MSDS」と呼ばれることがあるため、SDSがないと言われた場合はMSDSの有無について確認してみる方法があります。
中国メーカーから受け取ったSDSはそのまま使えますか?
まず、実際に発注する商品・原料に対応したSDSなのか、発行元や発行日・改訂日などを確認しましょう。
また、日本国内でSDSの提供などが必要になる場合は、日本側の法令に沿った対応を別途確認する必要があります。
SDSには商品の全成分・配合割合が記載されていますか?
必ずしもすべての成分や配合割合が分かるとは限りません。
SDSは商品の全配合を公開することを目的とした資料ではないため、不足している情報が必要であればメーカーへ別途確認します。
SDSがあれば「危険物ではない」と判断できますか?
SDSがあること自体を理由に、「危険物ではない」と判断することはできません。
危険有害性や輸送情報などを確認し、必要に応じてフォワーダーや専門家などへ確認しましょう。
中国メーカーのSDSがあれば日本で輸入・販売できますか?
SDSは日本での販売許可証ではありません。
商品カテゴリー、用途、使用している物質などに応じて、国内で適用される法令や必要な試験・表示などを別途確認する必要があります。
まとめ|中国OEMではSDSの内容を確認してから発注判断につなげる
中国OEMでは、商品や原料によって中国メーカーへSDSを要求することがあります。
しかし、重要なのはSDSを入手したという事実ではなく、その内容を確認して商品化の判断につなげることです。
SDSを入手したら、
- 発注予定の商品・原料に対応しているか
- 発行元・発行日・改訂日はどうなっているか
- 成分や危険有害性について何が書かれているか
- 取扱い・保管で注意すべきことはないか
- 輸送について追加確認が必要ではないか
などを確認しましょう。
そして、SDSがあるからといって、安全性や日本での販売可否が保証されるわけではありません。
SDSを入手する
↓
内容を確認する
↓
必要な法規制や輸送条件を調べる
↓
不明点を中国メーカーへ再確認する
↓
必要な確認が終わってから発注する
この順番で進めることが、中国OEMの商品開発でSDSを活用する基本です。
参考文献・引用元
- 厚生労働省:「化学物質対策に関するQ&A(ラベル・SDS関係)」
- NITE:「SDS記載内容」
- 厚生労働省:「SDSの記載内容に関する規定等」
- NITE:「化管法SDS対象物質」
- 経済産業省:「電気用品安全法 法令業務実施手引書」
著者プロフィール
著者:中国OEM実務者
中国OEM・輸入ビジネスの実務経験10年以上。
中国OEM工場の現地訪問経験(約20社)。
OEM商品の企画・製造の交渉に従事。
中国工場とのオンライン商談、MOQ交渉、輸入原価計算、品質管理などの実務を経験。
現場で得た知見をもとに、中国OEMや輸入ビジネスに関する実践的な情報を発信しています。


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